捨てるんもったいない!大阪商人の心意気が生んだ「ミックスジュース」の歴史
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●Tracing the roots of the Osaka classic, ‘mixed juice’
大阪発祥ミックスジュースのルーツを紐解く
なぜミックスジュースは大阪で生まれ、今でも愛されているのだろう。
今回、ミックスジュース発祥の店である『千成屋珈琲』の4代目・白附氏に、そのルーツと長く愛されてきた理由を伺った。
●果物店で生まれ、喫茶店文化とともに根付く
ミックスジュースは、大阪の新世界で生まれた。昭和23年、果物店を営んでいた初代店主の恒川一郎氏が、考案したのが始まりといわれている。「完熟したフルーツはおいしいけれど、皮が傷んでしまうと売れなくてもったいない」と思っていたところ、ミックスジュースにすることを思い付き、売り出した。それが評判を呼び、人気を博すことになる。最初は、果物店の軒先で飲んでもらっていたが、昭和35年にミックスジュースをメニューとして置くことを前提に、喫茶店『千成屋珈琲』を開店。ちょうど喫茶店ブームが訪れていた時代だった。「“喫茶店といえばミックスジュース”という流れを生み、大阪で浸透していったのではないか」と白附氏はいう。
初代店主の娘さん。創業当時、お店を手伝っていた時の写真。
●大阪人に愛されてきた理由
フルーツを無駄にしたくないという想いで生まれたミックスジュース。そこには、大阪商人はもちろん商人としての基本である、無駄なく最後まで使う“始末の精神”を見ることができる。そのような考え方も、ミックスジュースが大阪の人々に広く愛されている理由のひとつかもしれない。また、当時フルーツは贅沢品でご馳走だった。「いまでいうスイーツの原点だったのではないでしょうか」と白附氏。“贅沢品のフルーツが何種類も入っている”のも、当時の人々を喜ばせ、ミックスジュースが愛されてきた理由なのだろう。大阪では、喫茶店だけでなく家でもお母さんがミックスジュースを作り、飲む習慣がある。大阪人にとっては、ソウルフードと呼ぶべき存在なのだ。
●コラム
今回、ミックスジュースの秘伝レシピを一部公開してくれた。これを参考に、フルーツや牛乳の量を調整して、
自分なりのミックスジュースを作ってみてはいかがだろう。
創業当時からの看板メニュー
・バナナ 他のフルーツよりちょっと多めにバナナを入れる。
・りんご りんごの酸味は、ジュースを飲んだ後のスッキリ感を演出してくれる。
・氷 フローズンのように、砕いた氷も一緒にミキサーへ。
・みかんと黄桃 みかんの酸味、黄桃の水分量も重要な要素。
・牛乳 フルーツの自然の甘みを引き立てる。ここは企業秘密だが、千成屋珈琲では、牛乳にある甘みをプラスすることで、オリジナリティを出しているそう。
●Interview
千成屋珈琲 4代目 白附 克仁 氏
大阪・新世界出身。千成屋珈琲が閉店すると聞き、「何としても名物のミックスジュースを残したい」と3代目店主の恒川氏と話し合いを経て、2017年に4代目就任。TV局勤務の経験を生かし、「古きを温め次世代へと発信するお店」をコンセプトに展開している。