大阪唯一の村で 人と人をむすび 棚田を守る
人口約5,200人の小さな村、千早赤阪村。ここに、室町時代から続く美しい棚田がある。平成11年には、農林水産省が実施する「日本棚田百選」にも選ばれ、おいしいお米と棚田文化を残すための保全活動も盛んだ。
●昔ながらの製法で旨みが凝縮 少量生産の天日干し米
下赤阪(しもあかさか)の棚田は、標高1,000m超の金剛山から流れる千早川の清らかな水と、寒暖差のある気候で、おいしい米づくりに最適の場所。主にヒノヒカリを作付けしている。そのほとんどは農家の自家用と、道の駅ちはやあかさかで販売するにとどまる貴重なものだ。極力農薬を使わず、いまでも”はざかけ”という、手で刈り取った稲を逆さに天日干しする農家も多い。機械で強制乾燥させるよりも、稲の栄養分がお米に蓄えられるので味が濃く、甘みを感じるという。棚田保全活動を行う下赤阪棚田の会 会長の千福清英(せんぷく きよひで)さんは、「自然のなかで育つ農作物は、自然なかたちでつくるのが一番やと思うねん」と朗らかに語る。
● 保全のためのとりくみ都会から人を呼び込む棚田を維持させる工夫
約7.4ヘクタールの棚田のうち3割ほどは遊休農地だ。「42農家の平均年齢は60代後半。そのほとんどに後継者はいません」と千福さん。過疎化が進む村の課題が、棚田農家にも重くのしかかっている。そこで棚田の将来を守るため、大阪府や地元農家が手をとり「大人の棚田塾」や「棚田オーナー制度」を実施している。参加者の多くが大阪の都市住民。関西を中心に棚田の保全活動を行う「棚田むすびの会」を設立したプランナーの中崎義己さんは、「都会から人が来てくれないとはじまらない」と、様々な仕掛けを10年かけて先導してきた。棚田塾で学んだ1期生が後進の指導にあたるなど、技術の継承は少しずつ積み重ねられている。
●棚田を愛する人を増やして村も元気に!
棚田の保全には、より多くの人に棚田をもっと身近に感じ、興味を持ってもらうことも必要だ。過去10回開催した”棚田夢灯り”もそのひとつ。棚田をライトアップさせ、田んぼのひとつにステージをつくり、ギタリストや歌手などを招いた棚田コンサート。昨年は1,500人を越える観客が押し寄せた。今年はクラウドファンディングで、より盛り上げていくという。こうして村の外からも棚田ファンを増やすことで、棚田にかかわる人を着々と増やしている。棚田の保全が村全体の活性化につながるとして、千福さんは「棚田を守りたい、村をもっと元気にしたい。そのためだったらなんでもするよ」と、意気込む。
長らくサラリーマンと兼業していた千福さん。いまは米づくりに専念する。この時期は、雑草とのたたかい。異常な暑さも相まって、本当に骨の折れる仕事だ。中学生のお孫さんも草取りなどの手伝いに来てくれるそう。
▼今回のmekiki libraryが掲載されているフリーペーパーはこちら
Umekiki Paper vol.22