幻想的な棚田で出会う”日本一”のお米『土佐天空の郷』
四国大陸の中央に位置する高知県本山町(もとやまちょう)。
標高250m~850mの高い山脈に囲まれた盆地で弥生時代から続く稲作は約9割が棚田で行われ、お米日本一コンテストで二度も最高位を獲得した『土佐天空の郷』が栽培されている。
●丸々大粒なお米を生み出す 風光明媚な地
土佐天空の郷のお米づくりに欠かせない条件。それは、寒暖差ときれいな水。『土佐天空の郷』を栽培する本山町では、一日の寒暖差が20℃以上になることも。気温の下がる夜間においしいでんぷん質が穂に蓄えられるため、より大きな粒の米となるのだ。また、この辺りは森林面積約90%の地であるため、山からの湧き水に恵まれている。さらには、田んぼの土はたっぷりの水を含んだ粘土質で、ミネラル分が多い。このような米づくりに最適な環境で作られているのが、本山町のブランド米『土佐天空の郷』だ。
●「世界一の米をつくる!」作り手の情熱と、データに裏付けされた高いクオリティ
恵まれた環境に加え、農家一丸となった熱い思いも後押しする。ブランド米を立ち上げて10年、徹底した質と味を追求してきた。取り組みの立役者、前田博さんは、お父様の代から米や畜産農家を継ぎ40年以上農家を営んでいるという。「以前は、各農家が“勘”で作ってたんです。でも米の価格破壊も起こりはじめ、これではいかんと思った」と、優しい口調で話す前田さん。40近い農家や農業公社とともに立ち上がり、それぞれの経験や知恵を集結させ、ブランド米栽培へとつながった。前田さんは、コンテスト受賞やお客様からの「おいしかった」という評価、反応が何よりもうれしかったという。「自分たちの方法は間違ってなかったんだと、自信を持てました」と大きな笑顔で話した。
●日本の原風景と農の姿をまもるために
美しい棚田の風景、そして美味しい米づくりに力の限りを尽くす農家の取り組みは、日本の至宝として永久保存したい。
この思いに共感する多くの人が、一年を通して本山の棚田を訪れる。春過ぎには、田んぼに張られた水が鏡のように太陽の光を映し出す鏡棚田に。稲刈りの時期には、山々の緑と黄金の稲穂が織りなす自然のコントラストに。さらに、地元の農業公社がかかしアートコンテストや田んぼアートなどのイベントを実施し、消費者が農業や農家に触れ会える機会をつくっている。
まさに”天空の郷”を次世代へ受け継ぐべく、今後も棚田の散策ツアーやアウトドアブランドとの共同イベントなどを開催し、より一層盛り上げていくという。
—-農家をたたえる風土が生んだ米と酒—-
●棚田の酒米で醸す高知県産100%の山廃仕込み酒
土佐酒造のお米と日本酒
「昔の人はこの棚田を手で掘ってつくったんだから、えらいわなぁ」と話す農家の池添さん。徳川時代あたりからこの地に伝わる、農作業をねぎらう民謡「土佐柴刈りの里」の伝承者でもある。お二人が案内してくれたのは、本山町のとなり土佐町にある相川地区。ここ一帯でとれる酒米「吟の夢」は、高知県の気象条件にあわせてつくられた、酒造りに適した米だ。日本酒づくりにおいても、使用する米の質で酒の味が決まる。明治創業の地元の酒蔵・土佐酒造が、この酒米を高知産の麹と醸したのが、雑味が少なく薫り高い日本酒『相川誉』(あいかわほまれ)。誉は、よい点をほめたたえるという意味。地元相川の米農家たちへ敬意を示し、この名をつけたそうだ。
「おいしい酒にしてくれてうれしい」という米農家の川井さん(写真左)と池添さん(写真右)
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Umekiki Paper vol.22