和歌山県の使い勝手のいい梅酢
●おいしい食べ方とは?
梅の大産地、和歌山県みなべ町は、ふくよかな果肉と華やかな香りが特徴で、高級梅干しの原料としても活躍している「南高梅」発祥の地。梅干しの塩分はもともと20%が基本。最近は塩分数%で蜂蜜や昆布と一緒に漬けるタイプも多いが、今回ご紹介したいのは、昔ながらの身震いしたくなるほどしょっぱい“あの梅干し”。そしてその梅の果汁に塩が溶けた、劇的にしょっぱいその副産物こそが「梅酢」だ。地元の梅農家さんは、梅酢使いが実に巧みで、しょうゆや塩の代わりに料理の随所で活用する。手の平に梅酢を振って結ぶおむすびは梅干しいらず。少々の梅酢を加えて炊いたご飯は日持ちもする。驚いたのは梅酢に3分ほど浸した鶏もも肉をフライパンで焼く「梅酢焼き鳥」。臭みが消え、肉が締まり、適度な酸味でさっぱりとした味わいへと出世する。なにしろ簡単。その知恵に激しく感嘆。
ー おいしい食べ方の紹介者ー
●小林 淳一
編集者。東京のフリーマガジン「メトロミニッツ」誌の編集長を経て、食材のカルチャー誌「旬がまるごと」をポプラ社より創刊。現在「地方の生産者と都市の生活者の距離を近づける」というコンセプトのもと、食とカルチャーの分野で編集やイベントの企画運営に携わる。好きな食べ物はネギ。ネギをたくさん食べたいので朝食は必ず納豆。