チョコレートを心から愉しむすゝめ。味覚と生活の豊かさの意外な関係
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●チョコレートの世界を自由自在に愉しむ
いまやワインや葉巻と並ぶ嗜好品として愛されているチョコレート。原料や製造工程へのこだわりに磨きがかかり、そのバラエティは近年ぐんと豊かになった。そんな魅惑の世界をチョコレートソムリエ&バイヤーである札谷加奈子さんがご案内。お気に入りの一枚をより深く愉しむためのヒントをご紹介する。
●ワインのラベルを読むように、チョコレートのラベルを読む
「店頭でどのチョコレートを買うか迷ったら、ラベルをじっくり見てみて」と札谷さん。そこには、味を判断する重要な情報が書かれている。たとえば、“シングルオリジン”と呼ばれる、単一産地のカカオを使ったチョコレートが出始めたころは、国別程度の大まかな分類がほとんどであった。好きな産地を見つけたら、さまざまな作り手の同一産地を食べ比べたり、同じ作り手の産地違いの食べ比べをして自分の好きな味を探していこう。少量生産のものなら、作った回ごとにナンバリング(※バッチナンバーと呼ぶ)することもあるそうだ。「同じカカオを使っていても、多数のステップがあるチョコレートづくりでは毎回微妙な味わいの差も出てきたりと、まさに、ワインのように一期一会な愉しみ方ができます」。
●次のトレンドはホワイトチョコレート&グルメドラジェ!?
世界のチョコレートのトレンドに精通する札谷さんが新たに注目しているのが、ホワイトチョコレート。小規模な工房でも自分でココアバターを絞れるようになったことから、カカオの個性が発揮されたホワイトチョコレートが登場してきているのだ。精製していない絞りたてのココアバターにはミネラルがたっぷり。豊かな味わいや香りに、これまでのホワイトチョコレートのイメージを覆されるはずだ。また、アーモンドやピスタチオなどのナッツをチョコレートでコーティングしたグルメドラジェも近年広がりを見せている注目株。BEAN to BARの作り手がナッツも自社農園で栽培したものを使って作ったり、フレーバーや食感をこだわり抜くなど、一粒にギュッと思いが込められたドラジェが世界を魅了し始めている。
●暮らしが豊かになるチョコレートの味わい方
「チョコレートのおいしさは一度や二度食べただけでは理解しきれない」と札谷さん。味覚は時間や体調によって変わるので、チョコレートのプロフェッショナルである彼女でさえ、同じものをいろんなシチュエーションで何度も食べるという。チョコレートをより深く味わうには、一口食べたら味を5つ探して言葉にするというトレーニングが効果的だ。たとえばラズベリーの酸味、ミルクのまろやかさ、ジャスミンのアロマ、ローストしたナッツの芳ばしさ、コーヒーの苦みといった具合に。口の中に意識を集中させながら記憶の引き出しをあけていこう。「アウトプットすることで、意識がより鋭くなり味も記憶しやすくなります。また、味覚を鍛えると食全体への意識や関心が高まります。つまりチョコレートを心から愉しむことで、毎日の生活を豊かにすることができるのです」。
チョコレートソムリエ 札谷加奈子氏
トモエサヴール代表。世界のショコラティエや産地に精通し、バイイングやイベントプロデュースを行う。国際的な品評会、インターナショナル・チョコレート・アワードの唯一の日本人審査員であり、テイスティングイベントや産地ツアーなどチョコレートを愉しむためのさまざまな企画を開催。チョコレートに関わる人々やその背景のストーリーまでを紹介し、旅するようにチョコレートを味わう愉しみや、チョコレートを通じて世界と繋がる喜びを届けるために世界中を飛びまわっている。