わ(和)か(華)らん(蘭)料理と呼ばれ、異国文化が絶妙に融合
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●歴史を辿れば、必然的に生まれたことがわかる伝統料理
鎖国時代の出島には多くの中国人、西洋人が行き交っていた。彼らのもたらした近代的な文化を柔軟に受け入れ発展を遂げた長崎において、異国人との距離は想像以上に近いものであったのだろう。自らの文化を豊かにした感謝の気持ちもあったのだろうか、同じ食卓を囲み平等に食事をする習慣が根付いた。これが朱色の円卓を囲み大皿にのせられた料理を分けあい愉しむ卓袱料理だ。日本において、一人前の食事をのせる膳で各々が食事をすることが主流で、誰かの皿に箸をつけることはご法度な時代に、長崎に根付いた人と分け合うという文化は、後の日本に大きな影響を与えた。
●一家団欒に欠かせないちゃぶ台は、卓袱料理が起源
異なる食文化、食の嗜好をもつ者同士が平等に食事を愉しむ卓袱料理。円卓を囲んで食べるスタイルは上座も下座もない。これが一家団欒を象徴するちゃぶ台の起源である。ちゃぶ台は漢字で書くと卓袱台。そのルーツは明確である。ちゃぶ台が日本全体に普及したのは昭和初期以降であることから長崎の食文化がいかに日本の食文化の先をいっていたかがうかがえる。
●和華蘭(わからん)料理とも呼ばれ、いい意味での混沌さが魅力
円卓に和(日本)、華(中国)、蘭(西洋)が絶妙に融合した個性的な料理が並ぶ卓袱料理。「おひれをどうぞ」という挨拶とともに食べる汁物から始まり、刺身、酢の物などの小菜が数皿、中鉢、大鉢、煮物、蒸物、梅椀、御飯などの豪華な献立。定番料理に衣に砂糖がはいったほんのり甘い長崎天ぷらや東坡煮(とうばに)と呼ばれる豚の角煮、蝦のすり身をパンで挟んで油で揚げたハトシなどがある。
▲現代の名工として長崎の伝統料理を受け継ぐ、前川敬一氏
▲朱色の円卓を囲み大皿にのせられた料理を分けあい愉しむ
取材協力:長崎ホテル 清風