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Food Study

グランフロント大阪で2013年からはじまった、
食のめきき力を磨く
プロジェクトUmekiki(うめきき)。

ここでは、普段なかなか見えない料理の
裏側にいるシェフや生産者など
食に関わるさまざまなプロたちの知識や経験を
Food Studyとして紹介していきます。


さぁ、おいしいをめききしてみましょう。

その姿は、まるで暗闇を照らす炎。
赤く煌めく『まりひめ』は
可能性に満ちた未来への、みちしるべ。

グランフロント大阪から南へ、車で1時間あまり。高層ビル群の眺めとはうってかわって、大空のもと田畑と民家が入り混じったのどかな風景がどこまでも広がる。この和歌山県紀の川市にある、和泉山脈を借景とする3棟のビニールハウスで栽培されている苺が、岡見農園のまりひめだ。

生産者の岡見美也子さんは、苺農家歴40年以上。3年前までは夫婦二人三脚で、親の代から継いだ苺農園を守ってきた。夫の清司さんが病で他界し、ひとりになった今でも、多くの人々の心をとらえて離さない見事なまりひめを栽培している。

そんな美也子さんが待つ岡見農園へ、株式会社アキナイのシェフ・香原勇気さんと共に訪れた。株式会社アキナイは、グランフロント大阪にあるフランスの郷土料理でもあるクレープやガレットのレストラン「CRÊPERIE Le Beurre Noisette」とスペイン料理店「Bar Español LA BODEGA」をはじめ、全国で24店舗の飲食店を展開している。

食材にこだわる香原シェフが、約7年前に出会って以来、惚れ込み続けている岡見農園のまりひめ。そのおいしさの秘訣とは?

苺を栽培して40年以上。
経験と勘が育む、贅沢なうまみ


まりひめは艶やかで繊細な生き物

岡見農園を訪れたのは、12月初旬のこと。この日は、一足飛びに春を迎えたのかと思うほど暖かな陽気だった。みかん畑の畦道を抜けた先、日焼けした健康的な頬をゆるめて美也子さんが出迎えてくれた。

ビニールハウスの入り口をくぐると、室内は外気温よりさらに暖かい。土を盛って筋にした約30mの畝(うね)がずらりと並ぶ。受粉を担う蜂たちが、苗から苗へと忙しく飛び回り、愛らしい白い花を揺らしていた。

まりひめは、和歌山県ゆかりの品種を掛け合わせ、2010年に誕生したオリジナルの苺ブランドだ。果実は大ぶりで、艶やかに煌めく赤色を帯びる。12月上旬から早期に収穫できることも特徴のひとつ。しかし、近年は気候変動により、状況が変わりつつあるという。

「高温だと苗がすぐ枯れてしまうから、今年は9月末に植えたんですよ。収穫のピークは1月頃になるかな」という美也子さんの言葉を受け、香原シェフは「昨年も猛暑の影響で全工程が後ろ倒しになって、5月初旬までまりひめがありましたよね」と思い返す。

まりひめは繊細な生き物で、気温や湿度の変化がストレスとなり、特に炭疽病(たんそびょう)という病気にかかりやすい。そのため近頃は、猛暑だけでなく豪雨や干ばつなどの異常気象もふまえ、生育の環境を整えなくてはならないのだそう。

土耕栽培と手しごとを貫き、
生育のゆりかごを豊かに

世話は焼けるが、みずみずしく濃厚な甘さで、人々を虜にするまりひめ。なかでも岡見農園のまりひめについて香原シェフは「うまみが強い」と断言する。秘訣のひとつは、生育のゆりかごとなる土壌だ。

近年は、地面より高い位置に苗の棚を設ける高設栽培が主流となっている。高設栽培は、いわば空中に浮かぶ島のようなもの。地域の土壌が持つ条件に左右されず、土壌病害の影響を受けにくい。中腰の姿勢にならずに作業ができるので、農家の体にかかる負担まで軽減される。

それでも岡見農園はあえて、地域と地続きになった土耕栽培を貫いている。その理由について、美也子さんは「土耕栽培は、土壌の栄養分や水分を活かすことができる伝統的な手法なんです。味にしっかり深みが出るから、うちはこの育て方を続けています」。

高設栽培と同時に水やりの自動化が広がるなか、岡見農園では長年の経験に基づく緻密な調整を加えるため、畝に敷設した灌水管の開閉も手しごとで行う。効率よりおいしさの追求を徹底しているのだ。

さらに、豊かな土壌づくりにも余念がない。肥料には、栄養源となる有機肥料に籾殻を加え、微生物の力で発酵させた自然由来のぼかし肥料を厳選。水やりには、和泉山脈を水源とする池の水を使用している。

最高の旬を見極める、
完熟収穫と花摘み

岡見農園のまりひめを語るうえで欠かせないもうひとつの秘訣が、完熟収穫だ。

中間業者を介した一般的な流通では、消費者の手元に苺が届くまでに数日かかる。そのため、日持ちを考慮し、やむなく完熟前に収穫する。しかし、産地直売を前提とする岡見農園では、豊かな土壌がまりひめを完熟させた、まさにその瞬間を見極めて収穫している。

「気温によって一番いい収穫のタイミングが異なるんですよ。暖かくなるにつれて、果色は早く赤くなる。だからといって、ちゃんと完熟する前に収穫すると味が乗らないし、少しでも完熟を過ぎると果色が黒ずむ。味と見栄え、その両方の塩梅を見計らって収穫しています」。

目利き力が試される場面は、収穫だけではない。栄養を集中させるため不要な花や脇芽を取り除く花摘みでも、取捨選択の見極めが重要となる。香原さんはハウスを埋め尽くす花を眺め、「これを全部ひとつずつ目で確認して、手で摘んでいるんですよね。すごいな」と感嘆した。

どのように美也子さんの目利き力は培われたのか。その真髄を尋ねてみたが「経験と勘かな」と一言さらり。その言葉に、語りきれない莫大な努力が垣間見えた。

もっと「おいしい」を届けたい。
まりひめ先駆者のあくなき挑戦


食べる人とつくる人が繋がる世界

今ではベテランの苺農家である美也子さんだが「苺農家に嫁ぐまで、こんなに毎日大変だとは夢にも思っていなかったんですよ」とスタートラインを振り返る。

岡見農園の2代目である清司さんと結婚後、和歌山県の代表的な苺ブランドであるさちのかを中心に、長年夫婦で苺を栽培してきた。25年前、岡見農園の近隣に大型の直売所が建設されたことを機に、仲介業者を介した間接販売から直接販売に切り替えた。

「それ以来、食べた人たちから嬉しい感想が直接返ってくるようになりました。直接販売なら日持ちを気にせず完熟の苺が出荷できるから、つくり方にとことんこだわって、もっとおいしい苺を届けよう。そんな思いで、これまで主人とふたりでやってきたんです」。

夫婦二人三脚から、ひとり。
受け継ぐチャレンジの精神

15年前、まりひめが品種登録されるや否や、岡見農園はその栽培に取り組んだ。「主人が新しいことに積極的に挑戦するタイプだったんですよ」と言って目を細める美也子さん。

しかし、最初は100株あった苗が、瞬く間に炭疽病にかかり、残ったのはたった3株。当時は、扱いが難しいわりに味が安定しないことから、栽培を諦める農家も少なくなかった。現在まりひめが高値でも買い手がつく人気ブランドとなっているのは、岡見農園をはじめとする先駆者たちの努力に他ならない。

3年前に清司さんが病に倒れ、昨年の暮れに他界。今年で67歳となる美也子さんだが、農園の継続を諦めなかった。8棟あったハウスを3棟に減らし、小規模生産に適した肥料に切り替え、ひとりで岡見農園のおいしさを守り続ける方法を模索し、その未来を切り開いてきた。

「肥料に米糠も使ってみたいなとか、挑戦したいことはいろいろあって。ひとりだと体力に限界があるからいっぺんにはできないけど、まずは自分にできることから少しずつね」と、力強く語る美也子さんの瞳には、清司さんのチャレンジ精神が宿っているように感じられた。

日々のささやかな実りを胸に
未来の可能性を追い続ける


揺れる心を奮い立たせるのは、
苺の生命力と「待っていたよ」の声

たくましく生きる姿が印象的な美也子さんだが、意外にも「ハウスに行きたくない」と足取りが重くなる朝は少なくないという。炭疽病に弱いまりひめは、長年の経験を積んだ岡見農園であっても、毎年、数百株が枯れてしまう。その姿を見るたびに胸が締め付けられる。

「365日、目が離せない。私にとってまりひめは、我が子同然です。だから、成長に一喜一憂する。病気が広がっていたらどうしよう...と考えるだけで心が折れそうになるけど、一方で、病気に負けずに強く生きる苗もある。その生命力に励まされ、心を奮い立たせながら毎日畑に向かっています」。

そして何より、毎年まりひめが直売所に並ぶたびに聞こえてくる「待っていたよ」という消費者の声。それが、これからもおいしい苺をつくろうと背中を押してくれる。

本当に選びたい未来を諦めない

このように丹精込めて栽培される岡見農園のまりひめ。香原シェフは「糖度は高いけれど甘過ぎず、濃くて上品なうまみが後味に広がる。だから、さまざまな料理との相性がいいんです。岡見農園さんのまりひめは可能性に満ちていますね」と太鼓判を押す。

炭疽病への弱さ、夫婦協働からひとりで畑を守る営みへの変化、そして苺の成長に一喜一憂する心の揺れ。そういったハードルを理由に、その先にある未来まで手放してしまう道もあっただろう。しかし、美也子さんは諦めず、暗中模索であっても日々の手応えを大切に、未来の可能性を追い続けている。

ふと、自分自身を振り返ってみてほしい。ビジネスやプライベートなどさまざまな場面で現れるハードルを前に「私にはできないかもしれない」と、本当に選びたい未来ごと諦めてはいないだろうか。

そういうときこそ、岡見農園のまりひめと美也子さんの姿を思い出し、可能性に満ちた未来を目指し、できることから一歩、いや一粒ずつでも挑戦してみようではないか。

Profile

今回取材した岡見農園の
まりひめを使ったメニュー

うめきた広場B1

CRÊPERIE
Le Beurre Noisette

「今年はいつから?」と問い合わせが寄せられるほど、毎年評判でファンの多いクレープ。岡見農園のまりひめの濃厚なうまみを引き立てるため、主張の強い生クリームではなく、あえて卵白を泡立てた口溶けのいいメレンゲを添えている。まりひめとアールグレイとの香りのマリアージュまでご賞味あれ。

Fraise Earl Grey
まりひめいちごとアールグレイのクレープ


1,860円(税10%込)

詳細は、FAIRページをチェック


南館7F

Bar Español
LA BODEGA

スイーツはもちろん、オードブルでも、旬を堪能しよう。カリカリに焼き上げたハモンセラーノの塩気、クリーミーなマスカルポーネ、スモーキーな香りのマンチェゴチーズに、まりひめのフレッシュさが絶妙なアクセントとなり、自然とお酒が進む。岡見農園のまりひめがさまざまな料理にマッチすることがよくわかる一品。

紀の里産まりひめ苺と
スペインチーズのマリナード
〜白和え仕立て〜


836円(税10%込)

詳細は、FAIRページをチェック

Fair

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店内ご飲食(消費税10%)
テイクアウト(消費税8%)
※表示のない商品は、店内ご飲食のみのご提供となります。※価格はすべて税込です。※価格記載のない商品はイメージです。※一部店舗により期間は異なります。※お酒は二十歳になってから。 飲酒運転は法律で禁止されています。※数量限定、食材の在庫により品切れの際はご容赦ください。※料理画像はイメージのものもございます。実際の商品と異なる場合がございます。※料理内容・価格は変更になる場合がございます。※提供時間は店舗により異なります。詳細は各店舗にてご確認ください。※テイクアウト時、 袋代が別途必要な場合がございます。※テイクアウトとデリバリーでは表記価格と異なる場合がございます。詳しくは店舗まで、 ご確認ください。※内容は予告なく変更する場合がございます。※営業時間を変更・休業している場合がございます。詳しくはホームページをご確認ください。※掲載情報は、2026年1月15日現在の情報です。