沖縄島野菜と学ぶ、素材を活かす方法4選
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●島野菜の魅力を存分に愉しむ、おいしい食べ方〈Bringing island greens into your cooking〉
個性の強い島野菜をおいしく食べたい。そんなリクエストに応えて沖縄の伝統的な島野菜の料理法を教えてくれたのは、グランフロント大阪でも人気の沖縄食材をふんだんに使った鉄板焼ステーキレストラン『碧』の代表取締役の奥間弘子さんと店長の佐和田レイさん。特に奥間さんは、那覇に生まれ、幼い頃からおばぁの作る郷土料理を食べて育ち、長く島野菜に親しんできた。地域に根付くとっておきの食べ方をご紹介する。
おいしい食べ方 その1
●素材の味を生かしてシンプルに食べる
「味が強く、風味が豊かな島野菜は、できるだけシンプルに味わうのが一番」と奥間さん。調味料も塩・醤油・味噌を素材の良さを生かす程度に入れる。素朴ながら、個性の強い島野菜の素材の持ち味が生きているので、物足りなさを感じさせないのが沖縄料理の魅力だ。「私は野菜炒めでもいろんな野菜を混ぜず、にんじんだったらにんじんだけの炒め物というように単品で味わうのが好きです。その方が、野菜の個性をより感じられますよ。そのためには、一番おいしい旬の時期に食べるのが一番です」。ちなみに、『碧』の人気メニュー、「にんじんシリシリー」も冬の限定メニュー。西洋にんじんなら通年で手に入るが、 にんじんのおいしい時期にこだわり、大阪や銀座の店舗にも沖縄から送っているそうだ。
おいしい食べ方 その2
●汁に入れて、魚や肉の旨みを吸わせる
沖縄では牛や豚の骨付き肉や内臓、魚介などを丸ごと煮込んだ滋養満点のシンジムン(煎じ汁)をよく食すが、それぞれの汁物には名脇役ともいえるぴったりの島野菜がある。例えばクスイムン(薬、滋養食)の代表であるイカの墨汁はンジャナ(ほそばわだん/ニガナ)。豚レバーを煮込んだ汁(チムシンジ)には島にんじん、ソーキ汁にはシブイ(冬瓜)、ヤギ汁にはフーチバー(にしよもぎ/ヨモギ)。「島野菜から旨みが出るのはもちろん、野菜の苦みや渋みが肉や魚の臭みを和らげたり、毒消しの役目を果たします。また野菜自身にもスープが染み込み、更においしくなるという相乗効果もあるんですよ」。
おいしい食べ方 その3
●島豆腐とあわせることでまろやかに
「苦みが強いンジャナ(ほそばわだん/ニガナ)やアクのあるンスナバー(ふだんそう)はスーネーにすると食べやすくなりますよ」。スーネーとは豆腐や味噌であえる白和えのこと。島豆腐は本土の豆腐よりも固く、大豆の風味が強いのが特徴だが、よく水切りした木綿豆腐でも作れる。本土の白和えは胡麻を入れることが多いのに対し、沖縄ではジーマーミ(落花生)をすり潰したものをよく入れる。味噌はたいてい白味噌だ。豆腐のまろやかさ、味噌やナッツの甘みが食べにくい野菜も優しい味にし、苦みをおいしさに変えてくれる。また豆腐とあわせるといえば、沖縄料理には欠かせないチャンプルー。豆腐や卵と一緒に炒めれば、ゴーヤーなどの鋭い苦みも和らいで、いくらでも食べられてしまう。
おいしい食べ方 その4
●“てぃーあんだ”をたっぷり入れる
「昔から沖縄のおばぁたちは、『この料理にはてぃーあんだがいっぺーだからおいしいよ』といいました。てぃーあんだとは直訳すると手の油。手の油が入るほど、心をこめて作ったよということです。素朴だけれど手間をたっぷりかけるのが沖縄料理。相手への思いやり、おいしいものを食べさせたいという気持ちが、なによりの沖縄料理らしさなんですね」。沖縄の人々は、厳しい自然のなかで、工夫を凝らしておいしく体に良い食事を作ってきた。そんな生活の根底に流れているのが、てぃーあんだ。ぜひ、島野菜を料理するときは、てぃーあんだをたっぷり入れてみて。きっと大切な人に、おいしさを越えた温かさを伝えることができるはず。
●Interview
株式会社 碧
代表取締役 奥間 弘子氏(写真右)
店長 佐和田 レイ氏(写真左)
奥間 弘子氏
1947年沖縄県那覇市生まれ。会計事務所で長年働き、飲食の世界に入ったのは4人の子育てが落ちついた50歳を過ぎてから。1999年、那覇市久茂地に1号店をオープン。現在、那覇市内に6店、大阪、銀座にも店舗展開する。2016年より代表取締役に就任。創業以来、“全スタッフが女性”のスタイルにこだわり、気持ちのこもった料理とサービスが好評。
佐和田 レイ氏
1992年沖縄県那覇市生まれ。高校時代に偶然通りかかった、碧国際通り牧志店で生き生きと働く女性社員に目を惹かれ入社を決意。卒業後、株式会社碧に入社。2015年に国際通り牧志店店長就任後、2018年4月より大阪うめきた店の店長として着任。沖縄出身者として一人でも多くの方に島野菜の魅力を伝えていきたいと考えている。