古酒と味わう、長い年月を経て生まれるものの価値
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●世紀を超えて、受け継がれる古酒
泡盛は“強くて酔う酒”とのイメージを持たれがちだが、沖縄の先人たちの晩酌は、水をチェイサーにちびちびと嗜むというもの。実に粋で健康的な飲み方だ。特に熟成が進んだ古酒はバニラのような甘い芳香が魅力で、味わいもまろやか。ゆったりと愉しみたい酒である。かつて沖縄の名家には100年、200年という超古酒があったという。残念なことに、先の戦争でそのほとんどが失われたが、近年自宅で古酒を育てる愛好家も増えているそうだ。家族や親しい人と島らっきょうやラフテーをツマミに泡盛を飲む。そんな豊かな時間もまた、心を癒すヌチグスイ。食事はもちろん、美しい音楽や景色、愉しいひとときもみな命の肥やし。そんな大らかな考えで物事を見てみれば、この世はヌチグスイで満ちている。
泡盛工場を守るシーサー。災いをもたらす悪霊を追い払う魔除けの役割を持つ。
有限会社比嘉酒造 研究員
中村 真紀さん(沖縄県読谷村)