●シェフの教室 名物トマトすき焼きがおいしい理由を学び、味わう
東京三田店にてミシュラン1つ星を獲得した日本料理人、小山裕久の創意溢れる日本料理店「ばさら」の名物トマトすき焼きが大阪へ上陸。「ばさら」の代名詞ともいえる多くの人を虜にしている料理だ。そんなトマトすき焼きの作り方を学びながら実際にそのおいしさを堪能する教室を開催。先生をつとめてくれたのは、日本料理 大坂ばさら 土田英次料理長。鮨職人でもある土田料理長の技を、目の前に見ることができる贅沢な時間となった。

▲土田料理長を囲むように設計されたカウンターから様々な技を学んだ
ここ、日本料理 大坂ばさらは、こだわりの食材を丁寧に調理した本格的な日本料理が味わえる名店。
鮨職人である土田料理長が、旬の魚を目の前で握る鮨も味わえる。
敷居が高いイメージがある同店。訪れた参加者も最初は少し緊張している様子だったが、土田料理長の優しい人柄にふれ、次第に和やかな雰囲気へと変わっていった。

さっそく名物トマトすき焼きを作るデモンストレーションが始まる。参加者の前に並べられた鍋の中にはエキストラバージンオイルが注がれ、ニンニクがはいる。日本料理店ではなかなか見慣れない光景と香りが店内を包む。

エキストラバージンオイルは、トマトと大変相性がよいという。使用するものは香りが強いものがおすすめだと教えてくれた。にんにくの香りがオイルに移ったら、玉葱を。玉葱は甘味の強い淡路産のものを使用しているという。玉葱がしんなりとし、やわらかくなったところに「ばさら」秘伝の割下が注がれる。じゅーという音とともに食欲をそそる香りが店内に漂う。割下が少しぐつぐつしてきたところに、トマトを投入。トマトは、とにかく大きく酸味が強いものを使って欲しいとのこと。また入れる際、はじめは皮目を下にしておくとトマトが煮崩れしないとか。



2~3分炊いて、トマトの皮がぴりっと破れてきたら、丁寧にトマトの皮を取り除いていく。家で作る際は皮はそのまま食べてもよいと話してくれた。皮をむいたら、トマトを横にして全体にゆっくり熱をいれていく。
ひとつひとつの工程が丁寧に丁寧に行われていく。ただ料理を食べるだけでなく、こうしてカウンター越しに職人の所作を眺められるのも、ここの魅力のひとつといえるだろう。


そして、いよいよお肉を入れる。今回使用したお肉は霜降りが美しい鹿児島産の和牛肉ロース。すき焼きでは特に、肉の柔らかさと旨味を存分に味わえるサシが多いものを選んでほしいという。さっと鍋に美しい肉をくぐらせた後、ひとつひとつ丁寧に器に盛り付けられていく。


美しく盛られた玉葱、トマト、牛ロース、そしてバジルの皿の横に、粘りをだしてお肉に絡めやすくするために、少しスチームされた卵が添えられる。お肉でトマトを包み、さっと卵をくぐらせて味わう。参加者からは思わず笑みがこぼれる。

もともと、トマトすき焼きは、総料理長である小山裕久氏が、庭で作ったことがきっかけで生まれたのだという。肉の旨味を最大限に引き立てる厳選した食材を選び抜いた結果、今のレシピに至ったのだそう。
旨味成分であるトマトのグルタミン酸と肉のイノシン酸は、互いに引き立て合いよりいっそう旨味が増すというから、おいしさの理由も理になかっている。またばさらのわりしたは出汁を使っていないため、旨味成分は食材のもつものだけを存分に味わえるようにしているのだ。

さて、トマトすき焼きも〆の時間を迎える。雑炊やうどんが一般的だが、ここで提案している〆は、パスタ。旨味の濃いものに合いやすい平打ちパスタのタリアテッレがキッチンから運ばれてくる。その横には、赤ワインとトマトピューレ、パルミジャーノだ。


すき焼きの鍋に赤ワインを注ぎ、トマトピューレをいれたら、パスタを。馴染んできたら丁寧にチーズを溶かして完成。初めての料理に参加者からは驚きの声も聞こえてきたが、ひとくち食べると、納得のおいしさに顔がほころぶ。
満足そうな表情をうかべる参加者の前に、土田料理長が披露したもうひとつの料理は、鮨。
Umekikiプロジェクトで行われた宮城の食材をつかったフェアを実施するにあたり、実際に宮城に足を運び、作り手と会話し、食材のルーツにふれた土田料理長。宮城の漁港で出会ったメバチマグロひがしものに惚れ込み、それを使った鮨を披露してくれた。


予告のなかったサプライズな贈り物に舌鼓をうつ参加者たち。土田料理長の鮨は、江戸前の鮨。シャリによく熟成した酒粕を原料として作った色の濃い赤酢を使用している。関西の鮨は、シャリに砂糖2:塩1の割合で加えるのに対し、砂糖1:塩2で作るという。赤酢自体にほんのりと甘味があるため余計な糖度を加えなくてもいいのだそう。
今回の教室は、家庭で使える技から職人ならではのこだわりの技まで、土田料理長から、様々な食の目利き力を教えてもらえる時間となった。いまからの季節だとクエやヒラメ、甘鯛などが鮨のネタとしておいしくなるという。是非足を運んでみたいものだ。
〈今回、教室を開催したのはコチラ!〉
グランフロント大阪 南館 8階 日本料理 大坂ばさら