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Food Study

グランフロント大阪で2013年からはじまった、
食のめきき力を磨く
プロジェクトUmekiki(うめきき)。

ここでは、普段なかなか見えない料理の
裏側にいるシェフや生産者など
食に関わるさまざまなプロたちの知識や経験を
Food Studyとして紹介していきます。


さぁ、おいしいをめききしてみましょう。

長野県の寒暖差と、
心地よい時が育んだ大粒の結晶。
瑞々しくコクのあるシャインマスカットが、
料理人と出会う時。

芦屋の地で20年以上続くイタリア料理店『RISTORANTE RAFFINATO(以下、ラッフィナート)』。
グランフロント大阪では、ラッフィナートによるジェラート店『BAR & GELATERIA RAFFINATO』がオープン当時から愛されてきた。

ひんやりとした口どけとともに、素材の味わいを楽しめるジェラートは、ラッフィナートのオーナーシェフ・小阪歩武さんによると、「経験がものをいうドルチェ。イタリア料理の料理人だからこそ、作れるもの」だそう。普段から良い食材や農家さんとの出会いを大切に現地へ赴く小阪さん曰く、「ジェラートは素材が良ければ良いほどおいしくなる」という。

今回は、そんなジェラートが生まれる背景を訪ねたいと、小阪さんと共に長野県の須坂市にあるブドウ農園『岡木農園』へ訪れた。雲ひとつない快晴の下、たどり着いたのは、広大なブドウ農園。ブドウの木から降り注ぐ木漏れ日で溢れた農園で、岡木宏之さんへ話を聞いた。

その果実の個性を見極めて。
ジェラートづくりの本質とは?


岡木さんが用意してくれたシャインマスカットに手を伸ばし、弾けるような実をつまんで顔へ近づけると、特有の華やかな香りに包まれる。口へ運ぶと、弾力のある実からは瑞々しい甘味と酸味が溢れ、真夏の暑さで火照った体全体を潤してくれるようだ。「香りがきちんと感じられて、すごくおいしい。酸味もしっかりとありますね」と、小阪さん。ジェラートづくりに、一番欠かせないものは食材そのものが持つ香り高さだという。

「岡木農園のシャインマスカットは、これまで出会ったものの中でも圧倒的に香り高い。他に比べてコクや旨みが凝縮されていると思います。ジェラートづくりは、この果実のおいしさを、どうやってよりよく、そしてストレートに感じてもらえるかが要。素材がもつ味わいを引き出せるように、何種類もある糖の中から最適なものを導き、香りというポテンシャルをどのように引き出していくかが問われます」。
レシピ通りに計量し混ぜ合わせていくのではなく、作り手が育て上げた果実の特徴と、食材と向き合ってきた料理人という組み合わせだからこそ、素材の味わいをそのまま感じられるジェラートが生まれる。

シャインマスカット栽培へ踏み切った父と
二人三脚で、時代をつくる


この土地だからこそ、
木に無理をさせずおいしいものが育てられる

岡木農園の歴史は、実は大正時代に遡る。初めは養蚕業を営み、その後は農園としてモモやリンゴを手がけていた時代もあったそうだ。シャインマスカットをつくりはじめたのは、15年ほど前のこと。宏之さんのお父さんである、岡木由行さんの代からだ。

「父は職人気質で、一年の360日は農園にいるような人です。シャインマスカットの品種が出始めた頃にブドウ農園に切り替えて、専門農園として続けてきました。実は子どもの時、農家の息子であることが嫌だったんです。軽トラックで送り迎えされるのがかっこ悪いと思っていた時もありました。でも企業に勤めて働いていくなかで、何かを売るなら自分たちがつくったものを売っていきたい、と考えるようになりました。誇りを持って売れるということはもちろん、よくない出来の時も真摯に向き合えると思ったんです」。

2019年、宏之さんは家業を継ぐことを決めた。そして現在、由行さんと共に、シャインマスカットをはじめとした8品種を栽培している。
「シャインマスカットは、気候の変化によって北海道などでもつくられるようになりましたが、全国でも屈指の生産量を誇る長野県は、やはりこの土地ならではの恵みが作用しています。ブドウの木は、日中に太陽を浴びたあと、夜にしっかりと冷やすことが大事なんですね。ここは、日中と夜の寒暖差が大きいので、ブドウにとって過ごしやすい環境なんです。うちでは夜にスプリンクラーで水を撒き、全体の温度を下げて木がしっかり休めるようにしています。全ては人間と一緒。無理をして疲れさせないように、育てていくことが大事です」。

伝統を守るために、
新しいものをも取り入れていく

いくら自然条件に恵まれていても、そのまま見守るだけでは、良いものが素晴らしいものへと変わることはないだろう。太陽や土壌から得た栄養をしっかりと行き届かせ、よりおいしい実を実らせるために、岡木さんたちが選んだことは、房の数を間引いていくということだ。さらには房に実った実も、一房につき35から40粒になるように、間引いている。そうすることで、一粒一粒にハリが生まれ、甘味も酸味も濃厚なコクのあるシャインマスカットへと育っていく。岡木さんの話を聞いていると、“ブドウをつくる”というよりも“お世話をする”という言葉がぴったりと当てはまる。最大限の力を発揮できるように手助けする、良いものに育つように心を配る。その果物が持つ個性を開花させるために、愛情を伴った眼差しで向き合っていることが伝わってくる。

▲房には成長具合によって異なる色の袋を日除にかぶせることで、収穫時のヒントにしていると、岡木さん。

▲短梢栽培と昔から続く長梢栽培の二つの栽培方法をとりいれている岡木農園。針金に沿って一文字に剪定する短梢栽培のほうが剪定や房の管理・収穫がしやすいそう。ただ、「より自然に任せて成長する長梢栽培の実のほうが、僅かな差だけれど甘みを強く感じる」という話も。

「一時期は昔ながらの方法を、古いと思った時期もありました。でも僕らが立っているのは、先人たちの知恵の上と捉えるか、遅れた技術と捉えるか。その違いだと思うんです」と、岡木さん。由行さんが続けてきた仕立て方を守りながら、新しい仕立て方も取り入れてきた。栽培過程だけでなく、オンラインブドウ狩り体験や、東京での『出前ブドウ狩り体験』などを企画したこともある。食べ手との触れ合いを大事にすることで、自分たちのブドウづくりのその先へと目を向けているのだ。収穫の喜びを食べ手に共有することは、できあがった料理の喜びを食べ手に共有することと似ている。岡木さんと小阪さんそれぞれにある思考は、五感で体感してもらうという点で重なっている。

生産者と料理人の出会いがもたらした、
唯一無二の味


新鮮かつ旬の味わいが、
食べ手の元へ続くように

岡木農園のシャインマスカットは、時間をかけることを守る。少しでも早く市場に出せば、より良い値段で流通するが、“本当においしい旬の味わい”を食べてもらうために、収穫時期をなるべく遅くすることを心がけているという。
「シャインマスカットは、実の色からは完熟具合がわからないので、早めに収穫して市場に出してしまうこともできるんです。でも、やはり食べ手となるお客様に、完熟のおいしさを味わってほしい。うちでは、完熟の目印になる房の枝の色がほんのり茶色に変わり始めるぐらいの頃に収穫を始めます。枝はできるだけ長めに切って、収穫した後も、枝に残った水分を実が得られるようにすることで、新鮮な状態が長く続くように考えています」。
岡木農園のお客さんは、実は通販で購入する個人の方が、全体の半分もいるそうだ。毎年購入する方も多く、「今まで40%ぐらいのリピート率だったのが、最近は50%になりました」と教えてくれた。

「農業って、時間を育てることだと思うんです。農作物をつくる時間は、絶対に短縮ができません。今は時間を短縮することに価値がある世の中ですが、その価値基準が見直された時、一番時間の価値を感じられやすいものが農業であり農作物なのではないかな、と思います」。そう話す岡木さんに、「おもしろい考え方ですね。本当にそうだと思います」と小阪さんは続く。
「料理も、やっぱりどうやってその料理がつくられているか、本当に理解するには長い年月がかかります。だからこそ、本当に好きでないとはじめられない」。一人前の料理人になるには経験を積み重ねることが必要。農業においては、自然と向き合いながら取り組む姿勢が必要だ。料理も農業もすぐに結果が出ないものだからこそ、そこにかける時間が機を育てるのだろう。そしてその姿がどんなものに仕上がるかは、ブドウも人も、良い時を過ごしたかどうかが要なのではないだろうか。

カップ一杯のジェラートが語る、
偶然の出会い

料理人として歩んできた小阪さんは語る。「一次産業と一番近いのが僕ら料理人。一次産業がボロボロになってしまったら、おいしい料理はつくれない。食材のありがたみや意味を、まず僕らがわかっていないと、お客さんにも伝わらないし感動してもらえない。だからこうやってお話を聞くことを大切にしているし、うちの料理人たちにも思いを共有してきました。岡木農園さんのシャインマスカットのおいしさを伝えることは、僕は使命だと思っているんです」。
“素材の味わいを感じる”というジェラートは、一見シンプルな魅力であるように見えるけれど、生産者と料理人、それぞれの時間と経験が何層にも重なり合った奥深い物語を持つものだった。偶然のコラボレーションのような味わいは、異なる場に立ちながらも通ずる視点を持つ二人が出会ったからこそ高められ、生まれた賜物だ。
長野という関西から遠い地でつくられた大粒のシャインマスカット。そしてそのおいしさに心を動かされた料理人が手がけたジェラート。その背景にあるのは、伝統的な栽培方法と新しい方法、大きな寒暖差、素材のそのままのおいしさと料理で引き出すおいしさ……。独立し相反するような手段や環境、個性に見えるものたちが同じ舞台に立つことで、混ざり合い、唯一無二のおいしさへと変わってゆく。

そんな物語を口にする幸運な機会を、『ひんやり濃厚フェア』で心ゆくまで堪能してほしい。

Profile

うめきた広場B1

BAR & GELATERIA RAFFINATO

今回取材した岡木農園の
シャインマスカットを使ったスイーツ

ジェラート2種盛りカップ
(シャインマスカット・かぼちゃプリン)


890円(税10%込)

※完売次第終了

香り、甘味、酸味の黄金比により生まれた、コクのあるシャインマスカット。秋の暑さを爽やかに変えてくれるような冷たいジェラートへと仕上げた一品は、素材の味わいを引き出す技術を持った料理人だからこそ成せる技。他では味わえない、ジェラート体験をぜひ。

詳細は、FAIRページをチェック

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