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シェフ3人が行く、お米を学ぶ高知県生産地ツアー

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グランフロント大阪には、約90をこえる飲食店がある。さまざまなジャンルのシェフたちとそこに関わる全国の生産者さんたちと一緒に、食の目利き力を磨くプロジェクトUmekiki(うめきき)は、その歩みをはじめて6年目。
今回ご紹介するのは、その活動のひとつである、シェフが食材の産地を訪ね生産者と出会い、食材を目利きする旅を追ったレポート。
シェフが出会った食材がどのような料理に生まれ変わったかは、グランフロント大阪で、2019年10月2日(水)から11月4日(月・振休)まで開催される料理フェア『日本の“おこめ”を愉しむ 新感覚おむすびフェア』にてお披露目される。
館内に設置しているフリーペーパー『Umekiki』(2019年10月2日発刊予定)でもその裏側が紹介されているので是非チェックしてみてほしい。
今までに青森県から沖縄県まで、津々浦々訪ねてきたシェフたち。今回は、“お米”について学ぶべく、宮崎料理 万作の料理長・濱田稔さん、いずみカリー マネージャー 市川裕一さん、世界のワイン博物館 副店長の及川航さん、3名のシェフとともに高知県を訪れた。

 

 

 
7月某日。大阪国際空港からおよそ45分のフライトで高知龍馬空港をめざした一行。到着後、早速生産者のもとへ向かう。
空港から車で北へ1時間ほど走らせ、最初の訪問地、本山町の棚田へ。道中、深い緑の山々へと景色が変わっていく。
3名のシェフたちからも、「すごい景色!」「きれいやなぁ」と、思わずつぶやきが聞こえてくる。日常の喧噪の地を離れ、しばし癒しの時間。

 

 

 

 

一般財団法人本山町農業公社の専務理事・和田耕一さんと合流し、高知県中央部の吉野川源流地域にある嶺北(れいほく)エリアのひとつ、本山町吉延地区に到着した。四国山脈の真ん中あたりに位置し、標高250m~850mに水田が広がる。

 

 

「高い山々に囲まれ寒暖差が激しく、水がきれいな環境だからこそ、おいしくて大粒の米がつくれます」と和田さん。

 

 

まだ小さい状態の穂を見ながら説明を受けるシェフたち。「わたしたちが栽培する『土佐天空の郷』は、さらに大粒のものを厳選しています」と、農家の前田博さん。一般的には、直径1.75mmの網目にかけるが、『土佐天空の郷』では、品種ヒノヒカリの場合は1.95mm、品種にこまるには2mmもの大きさでふるうという。「にこまるは、二度も『お米日本一コンテスト』で最高位を受賞しました。やわらやくてもっちりしていて、色づやがよいのが特徴です」。

 

 

10年前から地元農家と農業公社でブランド米の開発に取り組んできた本山町の米作り。
かつては、それぞれの農法で栽培してきたが、みなが一丸となって知恵や経験を集約し、チームとして団結して進めるようになった。
さらには、ITを駆使し、町内の水田に約100カ所のセンサーを設置。水位や水温などをデータ化し、もっともおいしい時期に刈り取るなど、“世界一の米をつくる”という情熱の実現に向けた環境整備に力を注ぐ。

 

シェフのひとりは、「農家さんの思いや苦労をこうやってじかに見ると、今後の素材を選んだり料理を作るときも、気が敷き締まる思いです」と話した。

 

 

 

 

一行はその後、本山町農業公社の事務所に移動。『土佐天空の郷』のヒノヒカリと、にこまるについて説明を受け、にこまるを試食した。
シェフ一同、食べて納得、「粒、大きいなぁ」「もちもちしていて、甘みがある」と、そのおいしさに思わず笑みがこぼれる。
照り付ける日差しと長旅の疲れもあって、空腹だった取材班にとって“命の粒”となった。

 

 

「今後も、もっとおいしい米づくりができるよう、そして若い人たちが継いでいってくれるよう、がんばります」と前田さん。
「高知県には米以外にもいい食材がたくさんあります。それらとコラボして、何かできたらいいなと考えています」と和田さん。
これからの展開もとても楽しみだと、シェフと生産者たちの話が尽きぬ中、別れを惜しみつつ、本山町を後にした。

 

 

次の行き先は、本山町に隣接する土佐町の木材店、『さめうらこむ』。
地元産の杉やヒノキなどの木材を使用した家具や小物アイテムなどを制作・販売している。
伐採から流通、商品製造から小売りまで一貫管理する同店だが、それは非常にめずらしいようだ。

 

 

一般的に高級とされる国産材。それは「複雑な流通の仕組みが日本にはまだ根強く残っているからです。
そのために、安い材木を調達しようと東南アジアなどの森林を乱獲し、一方で森林再生をはかるために苗を植えるという矛盾した状況があります」と代表の和田修一さん。地元の資源を有効に使って商品化し、適正価格で販売することが、日本の森林環境を守ることにつながると話す。

 

 

 

丸太板は、料理プレートとして使うレストランも多いということで、「うちの盛り付けはどれに合うかなぁ」と真剣なまなざしのシェフ。

 

 

輪切りした板に、レーザーで特殊な加工を施したオリジナル木工品が人気で、ウェディングや記念日などのオーダーが全国から入るという。
まるで写真のようなレーザー加工は、プレートのほかキーホルダーやリングケースなど施され、それらの再現度の高さにシェフたちも、「すごい」の連発で驚きを隠せない様子。

 

 

乾燥で割れてしまうので、真夏でもクーラーなしの作業場。職人としての誇りと技、それを守るためのたゆまぬ苦労を知り、どこか自分たちと重ね合わせながら「さめうらこむ」を後にした。

 

 

同じく土佐町高須地区の棚田へも足を運んだ。この辺りでは、相川米(あいかわまい)も生産する。

 

 

 

酒米としては、高知県の気候や風土に合った酒づくりに適した品種が開発され、「吟の夢」が1998年に誕生。
地元の酒蔵・土佐酒造が、高知県産の麹とともに『相川譽(あいかわほまれ)』を醸造した。
「地元の農家さんを称える、ほこらしく思う気持ちを表現して命名しました」と、土佐酒造株式会社の筒井さん。

 

 

 

眼前に広がる棚田を背景に『相川譽』をいただき、農家さんと歓談するシェフたち。
「発泡酒のような軽い酸味とさわやかさがおいしい」と、美しい風景ときれいな澄んだ空気も作用して、試飲の盃が進む。

 

 

 

 

最後の訪問先は土佐酒造の工場。1877(明治10)年創業の老舗だ。ここ最近の日本酒ブームで、
銘酒『桂月』のほか、スパークリング酒や後口すっきり系の純米粋なども醸す。海外展開も増えており、いまではヨーロッパや台湾など38カ国に輸出しているとのこと。年季の入った釜は、いまも現役。
10月~4月に稼働し、酒米を1トン蒸すことから一日がはじまるそうだ。

 

 

 

 

お待ちかねの試飲タイム!桂月シリーズなど、ずらりとそろった銘酒たちを前に、
さすがシェフたち、それぞれの味の品評会がはじまった。お気に入りを見つけて大瓶を買う人、いろいろ飲み試したいと小瓶をそろえる人…。3人とも土佐の酒にすっかり魅了されたようだ。

 

 

 

土佐酒造を出ると、夕暮れ色の空を仰ぐ。朝早くから日の暮れるまで、日帰りの生産地訪問で疲れも垣間見えたが、フライト前には空港でかつおのたたきをいただき、高知県を満喫した。

 

 

 

世界のワイン博物館 副店長の及川航さん

 

現地で作り手の思いを知り、紙面だけではわからないことに気づけました。生産者さんたちの思いを大切にしながら、今後は自分がよりよいもの、料理をつくっていくことが責務だと感じました。

 

 

 

 

宮崎料理 万作の料理長・濱田稔さん

 

高知には海のイメージしかありませんでしたが、農村を見てがらりと変わりました。
見渡す限りの水田も見て、米の存在感、生産者の思い入れが深いことも知ることができました。

 

 

 

 

いずみカリー マネージャー 市川裕一さん

 

伝統や歴史を引き継ぎながらも、新しい手法や挑戦をしていることに感銘を受けました。
今後、自分の料理を通じて、そういった生産者の食材や活動を伝えていけたら、と思います。

 

 

 

 

これからも各地を訪れるだろう。

 

Umekikiプロジェクトは、今後も各店のシェフたちと日本全国にある生産地をたずね、
大阪の都心から生産者の思いを伝える活動をつづけてゆく。
10月から開催する料理フェア『日本の“おこめ”を愉しむ 新感覚おむすびフェア』やお米を題材とした料理教室、生産地ツアーなど、シェフとともにお米を学び味わう様々なイベントを実施する。
ぜひ、グランフロント大阪に、足をはこんで体感してみてほしい。

 

そして、次の生産者をたずねる訪問地はどこになるのか、そしてどの店舗のシェフが訪れるのか…。次号もお楽しみに。