人間のからだと生活に欠かせない塩の力
●世界中の塩は海水から
世界の各地で5億年~200万年もの昔に地殻変動によって海水が陸地に閉じ込められてできた“岩塩”が、世界の塩資源の約2/3を占める。残りの約1/3は海水から生産される塩であり、そのほとんどは、太陽の熱と風力で海水を蒸発させて作った“天日塩(てんぴえん)”である。
●日本の塩作りの歴史
日本は、岩塩資源がないので、海水から塩を生産している。多雨多湿なので天日だけでは塩にならず、多くのエネルギーを使って煮詰め、塩の結晶を取り出してきた。海水を濃縮して、煮詰めるという製塩方法は日本独自で、今も同じ原理のもと続いている。
〈古代〉藻塩焼き
諸説あるが、干した海藻に付着した塩分を海水で洗い出してかん水を採り、これを土器で煮詰めて塩を作ったとされる方法。
〈鎌倉時代末期〉塩浜と塩釜
天日により砂に塩分を付着させ、これを溶かして濃い塩水をつくる塩浜の形態が整ってきた時期で、“揚浜(あげはま)”と“入浜(いりはま)”があった。煮詰め工程には、様々な塩釜が使われた。
▲かん水をとるための装置である揚浜式塩田
〈江戸時代初期〉十州塩田
潮の干満の差を利用して海水を引き入れ、かん水を採る“入浜式塩田”と、従来の塩釜より生産性が高い“鉄釜(平釜)”の組み合わせ。
▲瀬戸内海沿岸を中心に発達した入浜式塩田
〈昭和のはじめ〉蒸気利用式塩釜、立釜
煮詰め工程で、ヨーロッパの密閉式塩釜を参考にした“蒸気利用式塩釜”と、釜の中の気圧を下げる“立釜”が主流に。
▲蒸気利用式塩釜の結晶釜
〈昭和28年ごろ〉流下式塩田
濃縮工程で、人力で砂を集めたりする必要のない“流下式塩田”を導入。労働力が大幅に軽減された。
▲長年続いた入浜式塩田に取って代わった流下式塩田
〈昭和47年4月以降〉イオン膜
従来の水分を蒸発・除去する方法から、イオンの性質を利用して海水中の塩分を集める方法へ全面的に移行した。
〈平成9年4月〉様々な方法
1905年から92年間続いた塩専売法が廃止され、新たに塩事業法が施行。塩製造者による様々な塩作りが行なわれるように。
写真提供・インタビュー : 公益財団法人 塩事業センター